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2008-04

供述調書流用批判に一言

 本日、朝毎読の3大紙がそろって社説で講談社の供述調書流用問題をとりあげ、痛烈に批判していました。取材源の守秘義務ならびに本の出版体制の問題などについての指摘で、概ね間違った意見はなかったように思えます。
 ただし、敢えて一言付け加えれば、この問題は本を出版したときからわかりきっていたのではないか。なら、もっと早く指摘すべき問題ではないでしょうか。もちろん事件になったときも報道はありましたけど、改めて今になって(講談社の調査報告書が出た段階で)ここまで大新聞が横並びにとりあげる重大事と考えているのなら、もっと突っ込んだ議論があってもいいのではないか、あるいは独自の視点でとりあげてもいいのではないか、と言いたくなります。どの社説をみても、建前の正論ばかり。はっとさせられるような鋭い指摘はありませんので、ついそう思ってしまいます。
 なかには、次のような批判までありました。
<なぜ、こんな“お粗末”な取材の本が出版されたのか。著者や編集者に、「とにかく売れる本を出したい」という安易な姿勢があったのではないか>(読売)
 なんとなく、日頃からよく思っていない出版社たたきのための批判のようでもあります。
 ちなみに、この騒動の根底には著作権問題があります。供述調書をそっくりそのまま引用すると、著作権法に触れる。基本は被疑者の権利だそうです。しかし、著作権法を厳密に適用すると、危険です。取材対象者がいったん話したコメントについて、都合が悪いから、と紙面掲載を拒否すれば、法に触れる。写真や録音テープの公表もしかりです。問題が起これば、すぐにプライバシーの侵害だと騒ぐ傾向がありますけど、安易に人権やプライバシーを振り回すと、自縄自縛に陥りかねない。被疑者の供述をそのまま引用せず、関係者によると、こう話していたとすればセーフ。事実関係に違いはなくとも、そうなるらしい。
 実際に不正を取材・検証するとき、知らず知らずのうちに著作権に触れていることも多いのです。新聞や雑誌ではわざわざ出版指し止めなどにならないだけです。極端にいえば、そういう多くの問題点をはらんでいる騒動なのではないでしょうか。報道現場でも、名誉毀損やプライバシー侵害についての法解釈は意外に知られていない。この際もっと深い議論をすべきではないか、などと考えてしまいます。
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プロフィール

森功

Author:森功
福岡県出身のノンフィクション作家。08年「ヤメ検」09年「同和と銀行」(ともに月刊現代)の両記事で2年連続「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」。18年「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)が大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
主な著作は「サラリーマン政商」(講談社)、「黒い看護婦」「ヤメ検」(ともに新潮文庫)、「許永中」「同和と銀行」(講談+α文庫)、「血税空港」「腐った翼」(幻冬舎)、「泥のカネ」(文藝春秋社)、「狡猾の人――防衛省を食い物にした小物高級官僚の大罪」(幻冬舎)、「なぜ院長は『逃亡犯』にされたのか――見捨てられた原発直下『双葉病院』恐怖の7日間」、「大阪府警暴力団刑事『祝井十吾』の事件簿」(講談社)、「平成経済事件の怪物たち」(文春新書)、「紛争解決人 世界の果てでテロリストと闘う」(幻冬舎)、「現代日本9の暗闇」(廣済堂出版)、「日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能人脈」(文藝春秋)、「総理の影 菅義偉の正体」(小学館)、「日本の暗黒事件」(新潮新書)「高倉健 七つの顔を隠し続けた男」(講談社)、「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)、「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」(講談社)など。最新刊は「官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪」(文藝春秋)

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