文春連載「西城秀樹と姐さん」
磨きあげられた光沢のある御影石は、ふんわりとしたまだら模様が沈み、何ともいえない風合いを感じた。その見事な墓碑が、左右対称に二つ並んで建っている。見たところ墓の高さも広さも同じだ。どちらも白やピンクの色鮮やかな造花の胡蝶蘭に彩られている。数多くの国宝を所蔵する四天王寺(大阪市天王寺区)の広大な墓地で、その二つの墓は際立っていた。
墓碑に刻まれた家紋は、左側が「丸に蔦柏」、右が「桔梗」である。桔梗は木本家の紋に違いない。墓石の背には、木本龍雄の文字があった。五月に亡くなった西城秀樹の本名である。四天王寺に建立された木本家の墓には、実父の三朗と実母の靖子が秀樹とともに眠り、健在である長兄の龍一郎の名も赤文字で刻まれている。
そして、左隣に建つもう一つの墓碑、「丸に蔦柏」紋の横には「宅見家」とあった。墓石のうしろには、「宅見恵美子建之」と記されている。恵美子は知る人ぞ知る秀樹の実姉だ。日本最大の広域指定暴力団山口組のナンバー2として斯界に君臨した宅見勝の内縁の妻として、芸能界でもその名が知られてきた。(以下略)
二つの墓の秘話です。