2017-10

結局断念「朝鮮総連」中央本部ビル落札の迷走

 鹿児島県の宗教法人「最福寺」による朝鮮総連中央本部ビルの落札問題は大騒ぎした揚句、断念する結果になりました。これについて、本日発売の中央公論「森功の社会事件簿」に書いていますので、紹介します。

 ミサイルの発射騒動ですっかり影が薄くなったけれど、こちらの問題も忘れてはならない。在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部ビルの競売、落札問題である。繰り返すまでもなく朝鮮総連は在日朝鮮人のため、日本と国交のない北朝鮮本国の大使館機能を果たしてきた任意団体だ。古くは在日韓国・朝鮮人の北朝鮮への帰還事業を進める一方、本国による対日工作とのかかわりも取り沙汰されてきた。日本の公安当局がマークしてきたのは、言うまでもない。
 そんな朝鮮総連中央本部ビルの競売は二〇〇七年六月、整理回収機構が起こした訴訟により、朝鮮総連に対する六二七億円の債権が確定したのが発端だ。そこから六年を経た今年三月、鹿児島県の宗教法人「最福寺」が落札し、東京地裁がこれを認めた。落札額は最低価格の二一億三〇〇〇万円を大幅に上回る四五億一九〇〇万円にのぼる。
 その最福寺法主の池口恵観は、各界の著名人に通じる名物僧侶だ。(中略)
 朝鮮総連中央本部ビルの競売が最初に話題になったのは、元公安調査庁長官の緒方重威による詐欺事件のときだった。事件はビルが競売決定がなされる寸前の〇七年六月のこと。奇しくも緒方が、今回と同じように、大使館機能を残したい」とビルの買主として名乗り出たのだ。所有権の移転登記まで済ませたが、結局、購入資金が用立てられず、東京地検特捜部が詐欺事件として緒方を逮捕したのである。
 事件当時、筆者もこの件を取材し、東京拘置所に収監されていた緒方本人の綴った詳細なメモを目にすることができた。自らの体験を忘れないように当人が残した「獄中備忘録」だ。たとえばそこに次のように書かれていた。
<六月八日午前十時、公安調査庁の柳俊夫長官から……中央会館(本部ビル)購入の動きと取引について、どうなっているんですか、という内容(の問い合わせがあった>
 緒方にとって柳は公安調査庁の後輩にあたる。備忘録では、その問い合わせが首相官邸から指示されていたと記す。このときの首相がほかならぬ第一次政権時代の安倍晋三なのである。安倍はリアルタイムで朝鮮総連本部ビルの取引を知った。その後、地検特捜部が緒方の摘発に乗り出す。

 今回の総連ビル購入断念は「政府からの圧力」と池口さん自身が記者に話しているが、安倍さんとの関係を考えると、そう単純な話ではないでしょう。安倍さんはこの件について、北朝鮮へのアメとして、ある程度、容認していたが、方針転換せざるを得なかった理由があると考えたほうがいいのでは。
 
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森功

Author:森功
福岡県出身のノンフィクションライター。08年「ヤメ検」09年「同和と銀行」(ともに月刊現代)の両記事で2年連続「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」受賞。主な著作は「サラリーマン政商」(講談社)、「黒い看護婦」「ヤメ検」(ともに新潮文庫)、「許永中」「同和と銀行」(講談+α文庫)、「血税空港」「腐った翼」(幻冬舎)、「泥のカネ」(文藝春秋社)、「狡猾の人――防衛省を食い物にした小物高級官僚の大罪」(幻冬舎)、「なぜ院長は『逃亡犯』にされたのか――見捨てられた原発直下『双葉病院』恐怖の7日間」、「大阪府警暴力団刑事『祝井十吾』の事件簿」(講談社)、「平成経済事件の怪物たち」(文春新書)、「紛争解決人 世界の果てでテロリストと闘う」(幻冬舎)、「現代日本9の暗闇」(廣済堂出版)、「日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能人脈」(文藝春秋)、「総理の影 菅義偉の正体」(小学館)など。最新刊は「日本の暗黒事件」(新潮新書)

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