2009-11

ラストスパート現代「同和と銀行」掲載

 本日発売の月刊現代11月号に「同和と銀行――三菱東京UFJの闇」という記事を寄稿しました。以下、冒頭部分です。

 「釣りに行ってくる」
2006年6月11日夜、男は唐突に言い、家を出た。気分転換のつもりだろう。家族は不安を覚えながらも、見送る意外になかったに違いない。それにしても唐突だ。やがて、その不安が的中する。
「あとのことは頼む」
 次に男からかかってきた電話は、こう言って切れた。
13日午前9時40分、大阪府岬町にある火葬場の駐車場の管理人が、男の乗った車を見発見する。男が家を出てから、すでにまる1日以上が経過していた。車が止まっていたのは、和歌山に近い町立淡輪駐車場だ。後方のマフラーからつながれたホースが、目張りをしたドアウインドウに吸い込まれている。大阪府警泉南署は排ガス自殺だと判断した。
 男は、自殺する直前まで三菱東京UFJ銀行萩ノ茶屋支店に勤めていた。まだ51歳という働き盛りの支店長、渡海雄幸(仮名)だ。5月末、渡海は支店長から大阪本部付になる。言うまでもなく、人事上の処分や降格の待機ポストだ。
 渡海の処分原因。それは、90年代後半の取引にさかのぼる。当時、渡海は大阪市東淀川区にある淡路支店に勤務していた。
 このときの取引相手が「飛鳥会」である。部落解放同盟大阪府連合会の飛鳥支部長だった小西邦彦が、理事長を務めてきた財団法人だ。06年5月8日、「飛鳥会」理事長、小西邦彦が、業務上横領容疑により、大阪府警に逮捕される。被差別部落問題を扱ってきた同和団体幹部の逮捕は、衝撃的だった。とりわけ、大阪の行政当局と同和団体の実力者との不透明な関係が話題を呼ぶ。
渡海の淡路支店時代の肩書は、取引先課長だった。旧三和銀行内ではトリチョウという略称で呼ばれる。新聞の中には、法人課長と記している報道もあったが、当時の三和銀行支店には法人課はない。支店では、法人個人の区別なく、預金の獲得から融資などにいたるまで、取引先課が外交部門全般を扱ってきた。取引先課長はそのトップにあたり、淡路支店のトリチョウが代々、飛鳥会との取引窓口になってきた。
 そして10年後、この淡路支店時代の一連の取引が、渡海本人を追い詰めるのである。

 ついに現代もあと3つで休刊となります。お見逃しなく。

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森功

Author:森功
福岡県出身のノンフィクションライターです。08年、「ヤメ検――司法に巣くう生態系の研究」、09年の「同和と銀行」(ともに月刊現代)の両記事が2年連続「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」を受賞。主な著作に「サラリーマン政商」(講談社)、「黒い看護婦」(新潮文庫)、「ヤメ検―司法エリートが利欲に転ぶとき」(新潮社)、「許永中――日本の闇を背負い続けた男」(講談社)がある。日本の空港問題を検証した「血税空港――本日も遠く高く不便な空の便」(幻冬舎)に続き、9月、「同和と銀行――三菱東京UFJ牘れ役瓩旅い回顧録」(講談社)を発売。

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